「人」こそが「最大のメディア」になり「ブランド」を創る (ザッポスの奇跡)

Posted by kUtsunomiya | Posted in Book, Inspiration, Marketing, Strategy | Posted on 17-02-2010

ザッポスの奇跡

ようやく読みましたが、読みながらはっと目が覚める、そして熱くなってくる、素晴らしい本です。

ザッポスとは、靴を販売するアメリカのネット通販企業。
昨年アマゾンが買収した企業でもあるのですが、
「最高の顧客サービスで知られる企業になる」というビジョンを掲げたこの企業の取り組みについて、
丁寧に、分かりやすく紹介されています。

多くの人にオススメしたいと思う、あまりに感動した本なので、少々長いですが整理をしてみます。



・従来とは全く異なる、コールセンターへの考え方

ザッポスが、まず他社と違うところは、コールセンターへの考え方について。

一般的にコールセンターでは、1件あたりの処理時間が、生産性を測る指標として使われています。
なぜなら、サービスは通常「コスト」として捉えられる、ためです。

が、ザッポスは、そうは考えない。
顧客を満足させるためだったら、ひとつのコールに何時間費やそうとも、とがめられることはない。
実際、創業以来今までの最長記録は、4時間だそうです。


そしてさらに凄いのが、顧客の欲しい商品の在庫がなかった場合の対応の仕方。

そういった場合には、他社のサイトを必ず最低3つはチェックして
その靴を入手できるところがないかどうか調べるよう、「教育」されているというのです。


「今、この商品を売るんだ!」ということでなく、
「顧客を満足させるために、『普通』を超えるサービスを提供できたかどうか?」
それが、ザッポスにおいて最大の指標となっている
という点。

ここまでな顧客サービスの徹底さは、エンターテイメントやホスピタリティ業界以外では
まず見られないことなのではないでしょうか。

24時間稼動するコールセンターと物流センター。
そして、時間も販売機会も顧みない、徹底的な顧客サービス。
そのコストを考えれば、なんでここまでしようとするのだろう?
これらを無くせば、もっと利益が上げられるだろうに。
そう考えてもおかしくないと思います。

その理由と取り組みこそが、自分が最も感動した、ザッポスの奇跡です。



・「顧客サービスをないがしろにする余裕は、僕たちにはない」

ザッポスが他の「ネット通販会社」と大きく異なるのは、
「コールセンターの存在そのもの」を全面に押し出していることです。

アマゾンを始め、従来的な「ネット通販会社」は、コールセンターの電話番号を
わざと見つけにくくしているところが多くあると思います。
極力、直接の問い合わせは避け、コールセンターを稼働させるコストを削減していく考え方です。
が、ザッポスではどのページにも、ヘッダへフリーダイヤル番号が大きく表示されています。

それについて、こんな話が出てきます。

「ザッポスでは、心からお客さんと話したいと思っている。その表れです。」

「5分、10分というまとまった時間を、顧客が、何も邪魔されずに私たちの言うことに
神経を集中して耳を傾けてくれる、そんなチャンスが他にありますか?」

「普通の会社ならTV広告やマスメディア広告に大枚をはたくところを、
ザッポスではその道を選ばず、代わりに顧客サービスに投資しているのです」

「ザッポスの成長の糧は、リピート顧客であり、口コミなのです」

「まずサービスを中核とした企業文化を築いて、育むこと。そうすれば成果は後からついてきます」


これが、これまでの疑問の全ての回答となっているかと思います。

つまり、ザッポスでは、サービスを「コスト」として全く捉えてなく、
コールセンターの電話対応は、「またとないブランディング機会」と捉えているのです。


サービスとは「ブランドを築くため」「顧客ロイヤルティを築くため」の『投資』。

いい体験をした顧客は、必ずまた戻ってくる。
そして、友人や家族に、その体験について話す。
顧客の心を揺り動かすサービスは、あくまで「人と人」のつながりから生まれる、ということへの強い信念。


だから、
「顧客サービスをないがしろにする余裕は、僕たちにはない」
と話すのでしょう。



・「人」が「メディア」になる

なぜ、このような発想が生まれるのでしょうか?
それは、「人と人のつながり」こそがすべて、という考え方が頂点にあるからだと思います。

それが顕著に表れているのが、顧客だけでなく、社内の社員も顧客と見なす「社内顧客」の考え方。
これは、ディズニーやリッツ・カールトンでも同様な考え方がなされていますが、
カルチャーこそが、ブランドであり、社員一人一人が「ブランドの伝道者」という考え方です。

・「顧客」に対しては、「口コミ」の働きかけ
・「社員」に対しては、「ブランディング」の働きかけ


つまり、顧客であり、社員である「人」こそがメディアとなる、ということです。


顧客を驚嘆させるサービスの提供。
社員へのハピネスを追求する経営の徹底。
それらはいずれも多大なリソースを要するかもしれません。

しかし、広告によって「つくられた」ブランドと、実体とに、もしギャップがある場合、
簡単に伝播するようになった今のネット時代においては、そこにかけたコストの多くは
簡単に吹き消されてしまうこともままあります。

であるのならば、顧客と企業とが出逢う「人」こそ、最大のメディアであり、
力を注ぐべきであり、企業と顧客のふれあいこそ「ブランディング」なのではないか?ということに
帰結しても全くおかしいことではありません。


ちなみにザッポスでも、ソーシャルメディア、特にTwitterは多く活用されています。
が、それは「顧客といつもつながっていたい」というシンプルそのものな理由によるもの。
これも、コールセンターへの考え方を知れば、とても頷けることだと思います。
また、そこで取り組まれている対話の内容についても。


「いつもつながっている」時代に、顧客が求めているのは、人間の顔をした企業である。
誰でも、人は人から買うのだ。



かなり長文となってしまいましたが、読みながら何度も目や胸が熱くなりました。

ザッポスのような組織を作ることが、容易でないことは重々承知です。
しかしながら、だから自分だってやるんじゃないか、と勇気を与えてくれることも
こうした素晴らしい企業がそこにあるからこそ始まることだと思います。

もしまだ読まれていない方は、是非とも。
もっと早く読むべきだったと思う素晴らしい本です。

情報の力関係と、実証が持つ納得力 (毎月新聞)

Posted by kUtsunomiya | Posted in Book, Inspiration | Posted on 15-02-2010

久しぶりに読んで、改めて沢山の気づきが得られた「毎月新聞」佐藤雅彦著 より。

その中で、非常にシンプルですが、はっとする表現がありましたので改めてご紹介。

まず、下の図を見てみてください。

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右を見られませんでしたか?
しかし、実は下の文字を見ると「左を見よ」と書いてあります。

でもそれが分かった後でも、どうしても右の方に目線が生きがちになってしまうと思います。
矢印のビジュアル表現がどうしても、文字より勝ってしまっているんですね。

では、ビジュアル表現が、文字情報より勝るかと言えば、決してそうではない。
文字情報の方が、ビジュアル表現より勝るケースもある。

ここが面白いところなのですが、また下の図をみてください。

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この図形、なんとなく見てしまうと、正11角形と見てしまいますが、
実は実際は、正9角形です。頂点は2つ足りていません。

このようなケースの場合は、ビジュアルを読み解くのが面倒なので、
文字情報に無意識に頼ってしまっているんですね。



・表現方法は、ケースバイケース。
・伝える目的によって、最適な表現方法は違う。

という、ごく当たり前に言われることについて、この2つの実証は、
実にシンプルに、かつ実感としてその納得を与えていると思います。

自分が、佐藤雅彦さんに圧倒的な凄さを感じることの一つは、こういった、
「ある種のカタルシスを感じるような気づきを、実証の方法で提供していく術」
についてです。

人にどう伝えれば、腹の底から感じ入ってもらえるのか?
そんなヒントが数多く眠っている良書です。

残りの90%のためのデザイン (世界を変えるデザイン—ものづくりには夢がある)

Posted by kUtsunomiya | Posted in Book, Inspiration | Posted on 21-01-2010

「世界を変えるデザイン——ものづくりには夢がある」シンシア スミス (著)

世界の全人口65億人のうち、90%にあたる58億人は、
私たちの多くにとって当たり前の製品やサービスに、まったくと言っていい程縁がない。
さらにその約半分は、食糧や、きれいな水、雨風をしのぐ場所さえ満足に得られない。


本書は、このマーケットとして対象外とされてきた、90%の貧困層の人々に対して
具体的なプロダクト例を紹介しながら、「デザインによってどんな貢献ができるのか?」
を解説していく本です。

まず、最初に自分がショッキングだったのが、
この中で登場する「Q Drum」と「ライフストロー」というプロダクト。

「デザインが持つ解決力」ってこういう事を言うんだな、と深く納得される、
あまりに素晴らしいプロダクトなので、ここでも紹介をしたいと思います。

Q Drum


世界中、特にアフリカの地方部では、何百万もの人々が、安定したきれいな水源から何キロも離れたところに住み、コレラ、赤痢など、水の媒介する病気にかかりやすい。
十分な量の水は重くて運びにくい。
Qドラムは耐久性のある容器で、簡単に転がすことができ、75リットルのきれいな飲み水を運べるようデザインされている。
持ち上げて運ぶのではなく、筒型の容器に入れて水を転がすことで、水を必要とする人たちにとって水運びの苦労を軽減する。


Lifestraw


世界の貧困層の約半分が、水に媒介する病気に苦しむ。
毎日6,000人が、安全でない飲み水を飲んだために命を落とし、その多くは子供たちである。
ライフストローは、個人携帯用浄水器で、どんな水でも飲み水に変えることを目指してデザインされた。
チフス、コレラ、赤痢や下痢など、水によって媒介される病気の予防に効果があり、15ミクロンといった小さな粒子を取り除くことが証明されている。



もう一点、これらプロダクトと本書から注目すべきなのは、

残りの90%の人々を「慈善」の対象でなく、「顧客」と考えていること。

という視点だと思います。

今の、人々の状況や行動を、まず知る。
そして、現状抱えている問題をデザインという手段で提示し、
なおかつ、人々が購入できる価格に設定して、現実的に提案していく。

このデザインにおける問題解決のプロセスは、
視点を「地球」や「人類」などに置き換えてみるだけで、
より多くの人への貢献ができ、ビジネスにも十分になりうるということ。

本書を読んで何がショッキングだったかというと、
「残りの90%の人々を顧客と考える」という、
そんな当たり前な視点に気づけなかった自分がいる、という点です。



今、自分が住んでいる身近な世界は見なくてよい、という事では全くないと思いますが、
自分の視野の狭さを知る、という意味で、とても有意義な本でした。

大変オススメの本です。

「違い」でなく、「極端な違い」を生み出す (”ザグを探せ! “)

Posted by kUtsunomiya | Posted in Book, Marketing, Strategy | Posted on 23-11-2009

「ザグを探せ! 最強のブランドをつくるために」 マーティ・ニューマイヤー (著)

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ここで言う「ザグ」とは、ジグザグの「ザグ」から。

ブランディング戦略論において、ここまでシンプルでメッセージ性が強く、
グラフィカルな本はそうないと思います。
その点が、この本の最も優れたところでしょう。

たとえば、「重要なのは「量」でなく「違い」」という項目で言及する、
「ザグ」を目指すメッセージ。



競争を一歩リードするための「差別化」では、もはや第一面を飾れない。
商品やサービスが極度に氾濫する現代においては、差別化だけでは不十分だ。
必要なのは「過激な差別化」なのだ。






みんなが「ジグ」なら、あなたは「ザグ」。

「違い」を生み出せ。

いや、極端な「違い」を。




このメッセージ自体が、時代の空気を十分に反映されていると思います。
「もう中途半端な定量から、プランニングしていたって、ブレイクスルーなんて生まれっこないよね。
でも不況だし、心配だし、なんとなくそれが求められてる気がやっぱりするし。。」
的な、重〜い諦めに似た、今の空気感に。

そのうえで、こうズバっと切っているあたりが素晴らしい。



現代の真の競合相手は、
直接的/間接的な競合商品ではなく、
市場の極度の「氾濫」にある。






「独自の強み(バリュー・プロポジション)」を描くうえでの鉄則は、
いわゆる「ベスト・プラクティス(最良事例)」を忘れる事だ。




そして自分自身へも問いかけていきます。



はっきりとさせなければならないのは、
あなたのビジネスは何か、つまり核となる目的は何かということだ。

核となる目的というのは、
「単なる金儲けを超えた、企業の根本的な存在理由」
のことだ。




これらのメッセージに続いたあとは、
「ザグ」を生み出すためのプロセスが紹介されていきますが、
この本の一番の存在意義は、
「差別化では足らない、過激な差別化を目指せ」という、そのシンプルで強い姿勢表明によって、
読み手に活力を与えていることだと思います。


この本は、熟読するというよりも、折りにふれぱらぱらとめくり、
はっと気づきを得るように活用するのが、正しい使い方な気がします。


最後に、冒頭で引用されている、ドラッガーのメッセージが素晴らしいので、ここでも引用を。
最も重要な機能なのに、最もなおざりにされがちなだけに、自戒を込めて。



ビジネスにはふたつの機能しかない。
それは、マーケティングとイノベーションである。


ー ピーター・ドラッガー


おすすめです。

「伝わる」ために必要なこと (「伝わる」のルール)

Posted by kUtsunomiya | Posted in Book, Inspiration | Posted on 18-10-2009

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読んでから、はや1ヶ月経っていましたが、GT伊藤直樹さんによる新刊。

はっとする「気づき」が与えられ、
その奥深さを、刺激と共に「知り」、
自分の思考と行動の浅さに「反省」し、
「ポジティブに」でも「より謙虚」に追求していこうと、改められる。

これは多くの本が持つ役割の一つかと思いますが、その意味で、この領域における本で、
ここまで逃げずに本質的な言葉で語られた本は、そうそう無いのではないかと思います。

例えば、インタラクティブなコミュニケーション体験を創ることについてのたとえとして。



インタラクティブを使ったコミュニケーションは、「お化け屋敷」に似ていると思うんです。つまり、お客さんに対してこちらから働きかけ、そこで起こった行動に対してさらに働きかけ・・・と
相互関係をつくり出していくことで、カタルシスのある「体験」を提供している。
そういうものがインタラクティブを用いたコミュニケーションの基本だとぼくは考えています。





これからの広告は、この「遊園地のアトラクションづくり」に似たものになっていくと思うんですよ。
カタルシスのあるさまざまな「体験」を受け手に提供することで、企業やブランドとの「つながり」を深めてもらったり、メッセージを感じてもらったりして・・・。
そうでなければ伝わらなくなったということもありますが、そのほうがずっとよく伝わるんです。
頭でわかるだけでなく、身体で感じてもらうわけですから。






いわば、どういう「お化け屋敷」にすれば、きちんと伝えたいことが伝えられるのかという目線で、広告の企画を考える時代になりつつある、ということです。
そして、そのベースにあるのが、「体験」のプロデュースというコミュニケーションであり、
インタラクティブというコミュニケーションの形態なんです。




とかくシンプルで分かりやすい。伊藤さんの企画に通じる分かりやすさが持つ、伝達力の強さが感じられます。

インタラクティブなコミュニケーションで最も必要なのは、「謙虚さ」だと自分は思っています。

講義でも、本でも、仕事でも、そして広告を接する人に対しても。
だから結果的に、そのコミュニケーションがインタラクティブなものとして成立できる、
そう捉えることもできると思います。
メディアがどうの、とか、WEBがどうの、という話では一切なく、それはまず姿勢の話だと思うのです。

広告の領域において「これ、すげえだろ」や「これ、流行っているから」の意図から
一方的に行っているものであれば、それがWEBのどんな新しいテクノロジーを使ったものであっても、
全くインタラクティブなコミュニケーションとはなりえないと思います。
そこにインサイトから帰結した「理由」がない限りは。




大事なのは、受け手がその広告に接したときの反応を想像することでしょうね。
グラフィックであれ、テレビCMであれ、どんな広告をつくるときにも
あてはまることだと思いますが、インタラクティブを用いる場合には、
そこが命といっていいくらい重要です。






広告に接した人がどう思うかを徹底的に検証するんです。
そのイメージが的確にできないと、うまく伝わるか、どのくらい話題になるかと
いった肝心なところが読めません。

つまり、人の行動をデザインするというか、ある種の「空間導線」を企画のなかに
埋め込むことができるようになるんです。





伊藤さんのインタラクティブに対する核の考え方(あるいは良心)が、見えてくる言葉だと思います。


あとは「伝わる」ために、どこまで逃げずにこだわれるか。
そこがこの本から得られる、もう一つの大きな気づきだと思います。




ぼくは打ち合わせのときに、全員がおもしろがるものが出るまでは、
企画を決めないことにしているのですが、
そこで全員が盛り上がるような企画は、間違いなくいいアイディアで、
いい広告になるんです。





企画のよしあしは、やはりビッグアイディアで決まるということでしょうかね。
ぼくの仕事でいうと、ハンゲームのキャンペーンだったら「人生の半分は、ゲームだ。」が
ビッグアイディアです。
「BIG SHADOW」なら、「影遊び」でしょうか。
いわば、企画の中心、真ん中の部分。
まずは、そこを見つけることです。
そのうえで、ビッグアイディアを囲むようなイメージで、
メディア展開の仕方や、コピー、デザインといった表現などのキャンペーンを構成する
すべてを考えていくんです。






目標は、3行で企画書のサマリーのようにして書けるところまでシンプルにすることですね。
「LOVE DISTANCE」なら、
「遠距離恋愛中の男女ふたりを、出会うまで実際に走らせる」。
シンプルだからそこからいろんな展開もできるし、シンプルだからブレないんです。
それに、シンプルだと、わかりやすい。
もうひとつ、ビッグアイディアがシンプルになっていると、人の口の端に乗りやすくなるんです。
評判をつくろうと思ったら、口の端に乗りやすくしてやらなくちゃいけないんです。





伊藤さんの企画は、すべてビジュアルがすぐに浮かび上がり、とかくシンプルなものが
ほぼ全てと言ってよいかと思います。
「企画の中心、真ん中の部分。」そこに至るまで、逃げずに思考を深めて行く。
この言葉を読むだけで、自分にとっては反省することしきりだったりします。

そしてインタラクティブの領域における、以下のような見方。
こういった言葉を今発せられる人は、少ないと思いますし、だからこそこの本の意義はあるのだと思いました。




やっぱりメッセージは表現で伝えるものなんですよ。
もしかしたら、表現でなきゃ伝わらないといってもいいかもしれないくらいです。
このことは、ぜひ肝に銘じておいて欲しい。





人の心を動かすのはやっぱりテクノロジーや仕組みではなくて表現なんです。
ほかのメディアを見ても、それは明らかでしょう。
ウェブはまだ新しいメディアですから、いまはテクノロジーや仕組み、インターフェースといった
部分がフューチャーされていますが、この先ずっと同じスタンスであるはずはない。
メディアとしてある程度の成熟を遂げたら、あとは表現とコンテンツのことしか
語られないんじゃないかとぼくは思っています。





ほぼ引用ばかりではありましたが、
自分の出来ていなさを痛感するのと同時に、体験を企てることへのヒントが詰まった良書でした。
改めて、積極的に人に薦めたいと思います。

固定概念への試金石 (広告は私たちに微笑みかける死体)

Posted by kUtsunomiya | Posted in Book, Inspiration | Posted on 29-08-2009

「広告は私たちに微笑みかける死体」オリビエーロ トスカーニ

1997年、今から12年前の本ですが、彼の広告同様かなりパンクな本です。

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Benetton2
Benetton3
Benetton4

Via : UNITED COLORS OF BENETTON.

これらの広告を見た時、多くの「常識的な」広告人たちの頭に浮かぶのは、
不快感、怒り、嫌悪。それから排除のような感情だと思います。

その理由は、「不幸」や「タブー」を売り物にして、「広告のルール」
を排した「売名行為」に見える、というのが主な理由かな、と思います。


もし、これが新聞や雑誌に掲載されたものならば、きっと見逃されたことでしょう。
が、それが「広告」を手段にするとなったとたんに、
広告に対する固定概念が強ければ強い人ほど、嫌悪感はきっと強くなると思います。


この本、それからトスカーニの広告表現が問うているのは、



私たちのまわりには解決出来ない問題や疑問が山積みだというのに、どうしてアパレル広告は、美しさと憂いのない気楽さだけを題材にしなければならないのだろうか?




という疑問。それから、



決して忘れないでもらいたい。広告が、消費者にとっての最初の間接税だということを。




という認識と、



ベネトンのメッセージ、それは討論すること。




という社会への投げかけです。
それが、最も夢見がちなアパレルの世界に対して、最もシリアスな現状を提示してみせる、
という手法に至っている背景かと思います。


すっごくパンクですよね。
彼がリスペクトするデザイナーに、ヴィヴィアン・ウエストウッドの名を挙げている
理由もよく分かります。


この接触を得ると、「広告とは、モノを広め売ること」という固定概念に対して、
いま一度「広告ってなんだろう?」と思わず考えさせられてしまいます。


もちろん、それが彼の意図なのでしょう。
そして、「ジャンルを超えよ。社会参加を果たせ」という事がメッセージなのだろうと思います。

この本は、今の自分がどれだけ広告に対し、固定概念にとらわれているかを知る、
試金石になる本だと思いました。
彼の広告と、本を読んで、どんな反応を人は示すのか?
それを見るのは、結構面白いと思います。

最後に、彼の考え方を示す、面白いメッセージがあるので、それを一部引用を。


人類史上、もっとも偉大な広告キャンペーンは、イエス・キリストのものである。
そのキャンペーンは、「互いに愛し合いなさい」という普遍的なスローガンを世に送り出した。
それから、十字架という立派なロゴも。

しかし、イエスの広告クリップには広告が嫌悪する<すべて>がある。
キリスト伝説は世の中の苦しみや暴力を何も隠しはしない。


「なぜ、エイズ撲滅キャンペーンで、勃起したペニスに一度もお目にかからないのか」


真ん中がいちばんいい (バガボンド)

Posted by kUtsunomiya | Posted in Book, Wording | Posted on 22-08-2009

ここ2週間前ほどからいきなり嵌りだした(遅い。。)バガボンド。
最新刊「バガボンド 30巻」、吉岡一門七十人斬り後の、武蔵と板倉勝重との会話に、どきっとしたので少々引用を。

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わしも剣は、人並み以上に修めてきたが
いや、だからか
「強さ」において、わしの知らぬ境地にいるおぬしに対する
引け目


引け目
それ自体は、心に生じた小さな波にすぎぬ

不安の方へ振れれば、心は閉じる
見まいとして、固く閉じた心の中では
不安はやすやすと恐怖にかわり、敵意へと育つ

その逆もまた厄介だ
崇拝する
同化したがる
寄りかかって執着のできあがり、目も心も開いているようで
閉じているのと同じ



別れ道は、いつも心のうちにあるわな

真ん中がいちばんいい




この「引け目」の感覚、すごく胸が痛いものがあります。
自分なんて全然大したことないし、と思い続けたり、口にしたりをすると、
相手へ、恐怖や敵意が、または無条件な崇拝や萎縮が育ってしまう。
これは今の自分に、とても当てはまることです。

smashmedia河野武さんの
「憧れは、理解から最も遠い感情だよ」のエントリーでも類することが、
異なる漫画で引用され、「萎縮やあこがれは捨て去った方が良い」
言われていた事にぐっときたのですが、

「真ん中がいちばんいい」
この言葉は、すっと腹に落ちました。
「真ん中に、真ん中に」
これは、自分のような、つい卑下する癖がついたタイプの人にとっては、常日頃から意識する習慣をつける必要があることでしょう。


漫画は、極めてシンプルな手法で、自分の心に問いかけや気づきや感動を与える、
高度にインタラクティブな媒体。

インタラクティブは、双方向とよく解釈されますが、
単にWEB上で対話できる、などの「仕組み」だけの考え方よりも、
「そのコンテンツは、どれだけその人の体内で反響されたか?」の視点から
まず考える事が、伝えたいメッセージを強くするには必要とされると思います。
だって、まずは「投げかけ」があっての、双方向なのだから。


バガボンドには、本質を削り取った台詞のシンプルさの中に、
読んだ人の体内で反響させ、増幅させるインタラクティブの力をとても感じます。



ともあれ、バガボンドは凄い漫画ですということで。
31巻は秋か。。

もてなしの心を作る仕組み (リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間)

Posted by kUtsunomiya | Posted in Book, Marketing, Strategy | Posted on 20-08-2009

「リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間」
高野 登 (著)

ホテル業において、お客様との大きな接点である「人」、つまり従業員に対して、
どのようにそのポスピタリティの精神を育ませ、維持させているのか?
この仕組みづくり(マニュアルではなく)が、エピソードと共に分かりやすくまとめられた本です。

この本は、ブランドマネジメントの本として読むと、
どう自分たちにも活用できるか?のヒントに溢れていることがわかると思います。

たとえば、
「リッツ・カールトンを支える七つの仕事の基本」について。

1. Pride & Joy
誇りと喜びを持てば意欲が沸く

リッツ・カールトンではお客様からの感謝の声を「ファーストクラスカード」と称する紙に書いてもらい、それを後で皆の前で表彰し、評価の対象とする制度があるそうです。
仕事で励みになるのは、お金でも待遇でもなく、誇りと喜び。
それを刺激し、評価する仕組みを用意することが、やる気を作る。

これを最初に掲げている点に、リッツ・カールトンの姿勢が伝わってくる気がします。


2. Don’t think. Feel
考える前に、お客様の温度を感じなさい

自分たちは直感的に、人や店が発するメッセージを温度として感じ取っています。
そして自分たちが発する空気に気を配るのと同時に、お客様の気分やニーズも、その温度から感じ取っていたりします。
それは、Webコミュニケーションにおいて、エントリー一つ、tweet一つ、コメント一つをとっても言えることだと思います。
仕組みやルール以前に、温度のある気持ちがそこに載っているか?
忘れがちですが、こういった言葉ではっとさせられます。


3. Let’s have fun
仕事を楽しめば自分の感性が発揮できる

どんな仕事も、やり方次第で自分の感性やイマジネーションを発揮できる舞台にすることができる。
そして、自分たちが楽しみながら仕事をしていれば、それは温度となってお客様にも伝わってくる。
サービスの神髄は、まさにここだと思います。


4. Celebration
お祝いしたいと思う気持ちがサービスの質を高める

スタッフが普段から祝う習慣を身につけていれば、お客様のちょっとした言動にも反応してお祝いの言葉やサービス表現をすることができる。
「もてなし体質」を作る習慣を、「仕組み」としても用意する。
ここまで来ると、サービス人を育て、作る。そこにどれだけリッツ・カールトンはフォーカスしているか、がよく分かると思います。


5. Chicken Soup for the Soul
優しさは仕事人としての必須条件

リッツ・カールトンの使命は、お客様に幸せな気分を感じていただくこと。
お客様が疲れている、傷ついている時こそ、精一杯のサービスをして温かい気持ちになっていただこう。
「優しい気持ち」「愛する気持ち」が、相手へサービスする時の前提。
ここまで徹底されていると説得力が違います。


6. Passion
情熱は組織を動かす大きなエネルギーになる

パッションは、行動するエネルギー、人を動かすエネルギー、自分の夢に人を巻き込むエネルギー。
このエネルギーがないと、どんなに素晴らしい理念や仕組みも動き出しません。
パッションは少しずつではあるかもしれないが、伝染するもの。それが情熱的なチームを作っていくという、ポジティブな考え方です。


7. Empowerment
お客様の願望をスピード解決

現場の最前線に立つ人間に、権限をゆだねる。
それが、スピードを持って、お客様のニーズを解消する最大の機会になる。
上6つで見てきた事を経過しているスタッフには、そうすることが最も効率的で、自然な試みであることがよく分かります。


後は、新たに迎えるスタッフについての考え方。
ここにも、素敵な仕組みがあります。

新しいスタッフは、初日からいきなりすれ違うスタッフに名前で呼ばれ、声をかけてもられるそうです。
「なぜ、自分の顔と名前を知ってるの?」と思うのですが、
スタッフには「○月○日に、○○さんが入社します。みなさんでウェルカムしましょう」と
数日前から告知してあるそうです。
この辺、提供しているリッツ・カールトンのサービスが、インナーでも同じように行われていることが分かり、とても共感が持てます。


まずは温かく迎え入れることで、不安は安心へと変わり、それはすぐに期待や信頼、そして自信へと変わっていきます。



そして最も、ぐさっと刺さったのが、



企業が犯す最大の罪は、従業員にビジョンなき仕事をさせること。

従業員の感性を鈍らせてしまうのは、単純作業や地味な仕事ではなく、「ビジョンなき仕事」なのです。


という言葉。

その一見地味な作業は、自分たちのビジョンを達成するためにどう意味があるのか。
この説明義務を自覚し、行っている点です。


大切なのは、頭で考えるプロセスです。
マニュアル化して「ああしなさい、こうしなさい」と教えても、企業のビジョンを浸透させることはできません。
そして毎日欠かさず行うことに意味があります。
たとえ数分でも、自分で考える時間を毎日作る。それがビジョンを自分のものにしていくのです。


最上位に、ビジョンを示したクレドがあり、
それが実現できるための、誇りや喜びを与える日常の仕組みがあり、
そのうえで、プラスαのサービスを提供できるための権限を与える。

一言で書くと、こういったことなのですが、
やはり最終的に落ち着くべきところとは、

ホスピタリティとは、心からのおもてなしをすることです。
つまり、お客様に愛情を示すことです。
その愛情の気持ちを持って接するだけでも、自然に行動に表れて、それが心からのおもてなしにつながっていくのです。


この「愛情」という点に、尽きるのだろうと思います。
自社都合でない、技術や設備へ依存するのでもない。まずは「心」で持ってもてなす。

なんだか引用ばかりになりましたが、
「心でもてなす」
というテーマにおいて、どうその仕組みを作り、日々実践していくか?について
ヒントがあまりに富んでいたので、整理もかねて今日はしてみました。

いつも手に届くところに置いておきたいと思う、良い本です。

顧客満足はスタートラインにすぎない (サービスは「かけ算」!)

Posted by kUtsunomiya | Posted in Book, Marketing, Strategy | Posted on 13-08-2009

サービスは「かけ算」!
中野 博 (著), 蓬台 浩明 (著)


「自分がしてもらってうれしかったことをお客様にすることが、サービス」
という定義から、
ある中小企業で行われている取り組みをベースに、サービスについてを解説した本です。

背景や因果関係を記載せず、引用文を載せるだけでは、あまり気づきは生まれにくいかもしれませんが、良い内容なので一部整理しつつ引用を。


■サービスの原動力について



自分自身が感動体質を取り戻し、この感動を社員とも共有したい、
お客様とも共有したい、つまり「ともに」という精神を持つことが原動力となるのです。


「どんなサービスをしたらいいのかな?」と悩むのではなく、
今まで受けてきたすばらしいサービスの数々をお客様にするだけです。

「おもてなし」の原点は、まずお客様を好きになることです。
好きになったお客様に自分がどのようなサービスができるか、
どのような話をしたら満足いただけるか、
あるいは結果的に信頼されるか、を常に考え続けていくことです。






■顧客満足はスタートラインにすぎない



本当に進んでいる会社やお店はサービス力を高めて、お客様を感動させています。
あなたが目指すべきレベルはお客様を感動させ、感激させること。
その結果、感謝される会社やお店になるのです。






■クレームの捕らえ方



サービス業では常に人間同士のやり取りですから、日々、クレームが来て当然といえば当然です。
気配りも場面や状況、気分で変わります。
おそらく、同じ人間でもその都度違うことを感じていますから、クレームがないこと自体がありえないと思うのです。

そもそもクレームとは「ニーズのタネ」のことです。
お客様が何かを要求して、あなたにメッセージを出しているのですから。
そのメッセージを集めれば、お客様のニーズがたくさん集まることになります。
サービス内容や対応などの改善方法が見つかるのです。

よく「ニーズに応える」と言いますが、最初のニーズは必ずクレームという形でやってきます。
決して「すみません、あなたのお店でこういうサービスをぜひやってください」というきれいな言い方ではありません。

不満客の多くがクレームという「プレゼント」を置かず、何も言わずに立ち去ってしまうことを覚えておかなければなりません。
黙って立ち去るお客様たちは、次回は他の会社を選ぶことになるでしょう。

やはり愛情表現の一つがクレームですし、ある意味では心と気配りのプレゼントですよね。






■社員力を高めると、サービス力は上がる



まず、社員が誇れる会社でありたい。
ともに働く社員が、友達や家族に自慢できる会社でいたいと思います。

社員自身が心底、自分の仕事に価値を見出し、
仕事を通じて生きがいを感じられることが重要です。






■そして存在の意義を問う、本質な質問について



「この会社がなかったら、世の中は困りますか?それはなぜですか?」

「あなたがいなかったら、会社が困りますか?それはなぜですか?」







例えば、東京ディズニーランドのリピーター率は90%超とも言われています。

「もてなすこと」への徹底。

「サービスとは、お客様を思いやる気持ち、おもてなしの心でするもの」ということ。

人は感情で動く事を考えれば、
この観点はどんな業種・職種にとっても、無関係にはなりえないと思います。

また、この本では、サービス概念の導入対象に、
中小の工務店という、
「モノづくり」&「サービス概念が希薄」な業種へスポットを当て
取り組みを紹介している点がユニークです。

これは、Web業界に当てはめれば、全くひとごとに出来ないものがあると思います。
例えば以下のような文章。




業界の中にいれば、日常であること、完成に向けての一つの過程にすぎないようなこと。

創る過程で、お客様にとって記憶に残る思い出をどれだけおつくりできたか、
その積み重ねが感動を作るのだと思います。





ここは、自分たちももっと目を向ける必要がある気がします。

もっと自分たちがサービス出来ることは、あるんじゃないか?
そんな疑問を持った時、ヒントになる本だと思います。

10,000の言葉より、絵本の力は強いときもある (こっぷ)

Posted by kUtsunomiya | Posted in Book, Inspiration | Posted on 13-08-2009

こっぷ
谷川 俊太郎 (著), 今村 昌昭 (写真), 日下 弘 (AD)

cup_book

たった23Pの写真絵本ですが、凄い絵本です。


コップは水をつかまえる。
コップは煙もつかまえる。
コップは、、、


そんな風にして、ガラスのコップを様々な目線から観て綴られた、言葉と写真による絵本です。

コップとは?というなんでもないモノに、既存の目線から外れて、今の自分ならどこまで自由に観る事が出来るか?
これは大人に対しては、ある種哲学的に語りかけてくる内容だと思います。

が、これはあくまで大人目線での話。

少し目線を柔らかくすれば、全く哲学的ではなく、極めて自然なものの見方。
物事には、いろんな見方があって、一つだけじゃないし、正解だってない。
好きに思い浮かべていいんだよ。
そんなメッセージが、歌のようにシンプルに届けられます。

この無駄のない、シンプルさが潔くて、とかく痺れます。
これから折りをみて目を通すだろう、スルメのような絵本。
おすすめです。