原点へ (計画と無計画のあいだ)

月曜日, 2月 20th, 2012. Filed under: Book



「計画と無計画のあいだ—「自由が丘のほがらかな出版社」の話」三島邦弘 (著)


新しいルールに乗らないことには、本当に生きていけないのだろうか?
一度、原点に帰ってみる、という選択肢はダメなのだろうか。



何かしなければいけない。
このままではいけない。
今の流れに乗り遅れてはいけない。
様々な事にもっと精通してなければならない。

不安感だけが先に走り、なぜか焦燥感ばかりが常につきまとっている状態。
それは自分にも大いに当てはまる事があります。
いや、格好つけても仕方がありません。本当はいつもと言ってもいいでしょう。

もちろん、時にそういった焦燥感が重要な場合もあります。

ただ、もし、その焦燥感の類いが、例えば自分のスキルのコモディティ化への危機感、のような類いに関するものなのなら。
また、世相的な危機感や不安感に煽られたそれであるのなら。
なんというか、実は忙しくしているようで、逆に足下がぐらついてしまっている、という事もあるのではないかと思います。

そういった現代に生き、働き、悩む自分も含めた人にこそ、ここで言われている「原点に帰る」について、多くを感じ入る事になる本ではないかと思います。

「原点回帰」をめざし、「一冊入魂」の精神で、良質な本を出し続けている出版社・ミシマ社の三島邦弘氏による一冊です。


読みながら、ページを捲る手が全く止まらず、一気に、そして目を熱くしながら読みました。
一見ほがらかで、でも力強くて、熱を帯びていて、一言で言うと「人間らしいほど人間的な」言葉が凝縮されています。


世界の流れに乗り遅れるという発想そのものから一度離れないことには、
個人と世界とのつながりも回復しないのではないか。



「原点回帰」。
冒頭で引用した「原点」について伝えられた次の言葉は、今、最も求められている本質的な事を伝えていると思います。


(ものの作り手にとって)原初的な喜びとは、一人一人がその本を取って喜んでくれることだろう。
その手放しの喜びを知り、さらにいいものをつくりたいと思うことではないだろうか。


※括弧書き内は筆者


目の前の本にあらんかぎりの愛情を注ぐこと。
ものづくりの原点は、「売る」ことでなく「喜び」を交換することにあるはずだ。



ある日突然「出版社をつくろう」と思い立った一人の青年による、起業から5年間の現在進行形の記録。
そこには、こんなに苦労して積み重ねてきた、といった類いの話は全くと言ってよいほど書かれていません。
でも、行間から感じるのです。
その本づくりに対する真摯さ、純粋さ、熱量、そしてものをつくるという事に対する原点を。


読んだ後で、感動したのだけれど、時に言葉で巧く表せない事って、まれにあるかと思います。

この本はそういった類いのものでしたので、このエントリーを読んでいただいている方にとっては何の参考にもならない事を承知で、あえて読んだ時の熱量そのままの状態で書いてみました。


この本に出会えて本当に良かったと思います。
ぜひ、一読を。
今書かれるべき本だと思いますし、今読まれるべき本だと思います。

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