Product & Service of the Year 2011

続いて2011年の「プロダクト&サービス編」を。
一言で「プロダクト&サービス」と言っても、やはりあまりに範囲が広すぎる事から、ここではデジタルおよびテクノロジー系の領域におけるプロダクトとサービスという形で限定して選んでいます。
その他先にお伝えしておくべき点としては、完全にリリースされているものだけでなく、プロジェクトとして提示されたものについても含めている、という点でしょうか。
特にテクノロジー系においては、一般市場に出たものと限定して対象外とするには、あまりにインパクトの強いプロジェクトも多くある事から、対象としています。
それでは、10位より順を追って。
10. MicrosoftResearch “Augmenting Indoor Spaces Using Interactive Environment-aware Handheld Projectors”

「Microsoft Research」が、プロジェクターとKinectカメラを使って作った、プロジェクタのプロトタイプ。
kinect で識別された部屋の空間上へ、リアルタイムに仮想のオブジェクトが投影され、ユーザアクションに対し、タイムラグを感じさせることなく、仮想空間へ反映されていきます。
下の映像のうち、5:50頃に記録されている、パーティクルがリアルの引き出しの中へこぼれ落ちていく映像など、文字通りARと言うべきプロジェクトです。
プロダクトではありませんが、流石にこれはあまりにインパクトがありすぎた映像のため、ランクです。
9. Björk “Biophilia”

レコード会社がCDをプレスし「モノ」と値段をつけ、販売する音楽の販売方法に対し、
「音楽とiPadアプリとの融合による、アーティストによる直接配信」という形で、音楽の新たな配信方法を示したビョークによるプロジェクト。
CDが「モノ」であるなら、このiPadアプリは
・「インタラクティブなミュージックビデオ」であり、
・「自分でアレンジが出来るミックスアプリ」であり、
・「背景としてその音楽が持っている学術を学ぶ学習書」であり、
・「視覚化された楽譜」であり、
・「音楽的題材に基づいたゲーム」であり、
・「音楽そのもの」でもある
という、あらゆる音楽の「体験」にフォーカスされ「統合」されている点が、その最大の新規性と思います。
björk: full biophilia app suite from Björk on Vimeo.
8. Sifteo “Sifteo Cube”

2009年にTEDでも講演された「Sifteo Cube」。
その一般販売が始まった事から、あえて今の時期にではありますが、ランクを。
Sifteo Cube はカラーディスプレイとWifiを備え、モーションセンサと近接したオブジェクト同士を認識する機能を持ったゲームであり知育玩具でもあるブロック。
リアルのブロックと画面上のアプリとがネットワークで組み合わる事で、画面を押す、傾ける、ブロック同士を並べるなど、よりリアルなモノへのアクションがアプリ上でフィードバックが得られる体験を提供しています。
発売にあたり、カスタムゲームを作れるGUIアプリの付属や、直接アプリをカスタムできるSDKの一般公開も行うなど、時代性も巧く取り入れている点も秀逸な点です。
類似コンセプトのプロダクトは、その間に他にも多くリリースされていますが、やはりこのプロダクトが持つ新規性/完成度には圧倒的な強さを覚えます。
既存の知育玩具やゲーム市場に対し、テクノロジーを掛け合わせガジェット的要素が加算される事で、全く新たな市場を創出した事例と思います。
7. Smule “MadPad – Remix Your Life”

あらゆる身近な「モノの音」を、12コマ分動画と合わせて撮影&配置する事で、動画とセットとなった楽器としてミックスが出来る、というミックスアプリ。
ミックス系アプリは数あれど、タグライン「Remix Your Life」の名の通り、「動画とセットで」という発想が、本当に盲点だと思います。
気づきそうで気づかなかった視点を、鮮やかに提供したアプリと思います。
6. Playground Sessions

自己学習意欲を支援するサービスとして、これまで在った教材やテープ、e-Learningに見られるチュートリアルやオンラインチャット、iPad等の教材系アプリ、などの既存の在り方に対し、それまでのあらゆるメソッドを統合した、音楽レッスンプラットフォーム。
「Nike+」を想起させるその統合の在り方に、ゲーミフィケーションの考え方も加味された、分かりやすく学べ、モチベーションを維持できる仕組みが丁寧にカバーされた、新たな市場を創る秀逸なサービスと思います。
5. Nest “Learning Thermostat”

「エアコンのコントローラ」という「超コモディティのプロダクト」。
普段注意が払われる事なく、その使い勝手にも、デザインにも疑問を持たれないこのプロダクトに、
・シンプルで美しい形状とUIを与え、リデザインを行い
・ユーザーの家庭行動パターンを学習し、温度調整を自動でおこなう機能を追加する
という、全く異なる着眼点が加わる事で、こうも製品は一変する、という事が示されたプロダクトと思います。
一製品に対し表面的なデザインを施すのではなく、
「エアコンを制御する」という行為そのものをリデザインする。
これこそ「インターフェースをデザインすること」と本質的に呼ぶ事が出来る、見本が示されたプロダクトと思います。
4. LEGO “Life Of George”

LEGOによる「ブロック」と「iOSアプリ」とがセットとなった、新たなブロック体験の提案。
プレイマット付きのレゴを購入し、合わせてアプリをiPhone/iPod Touchへインストール。
アプリ起動後、ゲームナビゲータである「George」が旅先で見つけた物の絵に対して、リアルなブロックを使いそれを再現。
再現したら、プレーヤーはiPhoneで撮影する事で、組まれたブロックはその精度が判定され、製作に要した時間と、その正確性とでスコアリングされていく。
というゲーム設定です。
レゴが持っている、ブロックという「モノとしての資産」と、
「iPhone/iPod Touchが持つデジタルがゆえの可能性」。
それらを組み合わせる事で可能となる、フレッシュな遊び方/学び方の方向性が
きれいに着地された、デジタルの活用の仕方として非常に優れた、課題解決性の強いアイデアと思います。
さらに、アプリ自体を「遊びのプラットフォームとして位置づける」ことで、「モノとしての玩具は追加購入してもらう」という「新たな需要の仕組みづくり」を提供している点、ここが最も優れた点でしょう。
「玩具市場そのもの」への需要拡大の方向性を示している事、それが単なるテクノロジーのかけ算の新規性だけに留まらない、ユニークな点と思います。
3. CASA DO ZEZINHO “Projeto Repartir”

これだけ例外的にデジタル領域でない事例なのですが、「寄付という行為をリデザインする」全く新たな、そして鮮やかな商品提供の在り方が提示されています。
「1つ分の値段で、半分だけを買う事で、残り半分の売り上げは世界の子どもたちへ寄付される」
だれもが、一目見て分かるプロダクトである点が、本当に素晴らしいと思います。
これこそデザインアイデアと呼ぶべき、プロダクト&サービスのリデザインです。
2. BERG “Little Printer”

これは
「既存のプロダクトをリデザインすることで、その価値観を一変させてしまう最上のケース」
と言っても良い完成度の高さではないでしょうか。
より生活へ便利さを与えるために、個人のアクティビティ情報をソーシャル連動する。
そこまでが今主流で行われているアプローチですが、
・そこへ、あえて「出力」というアナログさへ「逆へ振る」。
・さらに最も人の想像力から遠いところにある「プリンタ」というモノへと目を移す。
・そこに「個人用」の価値を加算するため、プリンタに「かわいさ」を与える。
と、何重もの積み重ねられたアイデアが、プリンタでもなく、ソーシャルネットワークサービスでもない、
圧倒的な差別化をもたらしています。
そして、このデザイン!かわいい!
普通に欲しい!と思わせるルックに落とし込まれているのも、デザインスタジオ発ならではの魅力に溢れています。
Hello Little Printer, available 2012 from BERG on Vimeo.
1. MIT Media Lab “Identity”

設立から約25年を経た、MITメディアラボの新VIの、その新規性。
VIの在り方を定義そのものから問うその内容には、とにかく衝撃を受けました。
3つの黒い始点から、3色の光が放たれる、という基本デザインに対し、ウェブベースのシステムから、その3つの黒い始点を「各人が自由に動かせ、自分専用にカスタマイズできる」機能を与えることで、一人一人オリジナルVIを持てるというその提案。
これこそが現代におけるVIの在り方、とでも言うかのような、従来のユニーク性というVIの定義とは真逆を行く堂々たる提案は、それこそデザイナーの価値観を一変させるものであると言わざるを得ないと思います。
MIT Media Lab Identity, 2011 from readyletsgo on Vimeo.
ランキングには入れておりませんが、たとえば、appleのiPhone 4Sに搭載された音声認識エージェント「Siri」。
または、一日の運動や睡眠などの行動を記録するブレスレット「Jawbone Up」。
そういった、「センサーを手段とした、行動データの収集/解析/提案」を切り口としたプロジェクトが増えつつある点も、特に来年においてはさらに加熱する方向性であろうと思います。
Apple – Introducing Siri on iPhone 4S
UP by Jawbone — Welcome to a Healthier You
が、既存の市場における固定した価値観または限界点を、テクノロジーないしアイデアによって「裾野を広げ、再発明」していくMIT Media Labの「インタラクティブVI」や、BERGの「Little Printer」、nestの「サーモスタット」のような在り方が、個人的にはやはりプロダクトやサービスの新規性を捉える上での重要な尺度と捉えているため、それらはランク外としました。
とかくこの領域は最もエキサイティングながらも、「そのテクノロジーの萌芽」をどうギークな対象者だけでなく、より一般的なアイデアへと変換していくか?
それこそバズワードではありませんが、ストーリーとテクノロジーとの幸せな関係をどのように築いていけるか?
に頭を悩まし、実行性が問われる領域。
自分自身も来年に向け、大きな課題を持つ領域でもあることから、
国内でも理解が深まるネットワークの機会がもう少し欲しいと願っています。
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