Book of the Year 2011

土曜日, 12月 31st, 2011. Filed under: feature



2011年もいよいよ終わりに近づこうとしています。

そこで、2011年を振り返るという意味から、今年出逢い、時代性を反映しながらも、強く胸を打つ普遍性を持った
・書籍
・プロダクト&サービス
・広告
をそれぞれ10点ずつ選び、ランキングにしてみました。

まずは「書籍編」から。
基本2011年に出版された本を中心に選んでいますが、過去に出版された本でも、あまりに素晴らしい出逢だった本も多少入れています。


10. 「MUJI 無印良品」



過去の作品とともに、経営者、CD、デザイナーたちによる無印への哲学が語られた、作品集といっても良い書籍。
その歴史を俯瞰で見る事で皮膚から感じられる、世界でどこにも存在しない「一貫した美意識と意志」の強い存在感。

・慎みへの美学と誇り
・無駄を省いた、「素」を旨とする美意識
・簡素さは、時に豪華さを凌駕する事への確信
・顧客と向き合い育むプロダクト開発

無印良品は、「企業の美意識」の存在とその独自性とが、どれだけ重要な指針となるかを証明しています。
私たち日本人が最も誇るべき企業と思っています。



9. 「グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ」デイヴィッド・ミーアマン・スコット (著), ブライアン・ハリガン (著), 糸井重里 (監修)



彼らが行っていたファンの為の試みが、どれほど「ソーシャルメディア」を活用したマーケティング施策に通ずるものであるか?が示唆される、ここ数年の中で、最も優れた、これまでにない視点の「マーケティング本」。
従来のマーケティング本にはない、「相手への楽しさ、が先立つ血が通ったマーケティング」がここにはあります。

ファンたちも、自分たちも、幸せであるためにはどんなことをすれば良いのか?
幸福感に満ちた、創造性溢れる「ビジネス書」です。



8. 「空想の繪本」安野 光雅 (著)



安野氏の書籍は、どれも美しく、丁寧で、それでいて空想が自由に舞っているかのようなワクワクを楽しむ事ができるのですが、この絵本はそれに加えて、安野氏の「視点」が語られています。
その伸びやかさ!しなやかさ!素敵さったら!

見方を変えたら、ほら、世界はこんなに楽しさに詰まっている。
そう楽しげに安野氏がこっそり教えてくれる、日常に生きる大人へ贈られた絵本。


7. 「100の指令」日比野 克彦 (著)



まさに「紙上ワークショップ本」。
日比野氏からの100の指令とそこにある問い。

オノ・ヨーコ氏の「グレープフルーツ・ジュース」を思い出す、この問いたちの輝かしさ!新たな視界!
オノ・ヨーコ氏のそれが「世界」を開くものなら、日比野氏のそれは「視線」を開くもの。

なんでもない事の中にこそ、無制限の可能性は横たわっている。
その普遍性に、やわらかく、刺激的に気づかせてくれる素晴らしい本です。

「飛行機雲を見つけたら、飛行機の中で みんなどうしているのか想像してみよう。」




6. 「石上純也 建築のあたらしい大きさ」石上純也 (著)



石上氏の「超ミクロ視点」と「超マクロ視点」が交差する「めまい」。
それを提示する、緻密さ、繊細さ、可愛らしさの惜しみなさ。
そして、それらが引き起こす、胸がぎゅっと締め付けられるドキドキ感、イマジネーションへの反応。

「パワーズ・オブ・テン」のような単位立てた高低差ではなく、
空を飛びながら、突如急降下し水面下へ潜っていく鳥にでもなったかのような、
スケール感の急展開が持つ、想像の旅。

建築というフォーマットではなく、人の想像の楽園、という目線から氏の思考と作品が堪能できる書籍です。



5. 「ストーリー・ウィーヴィング」渡邉 康太郎 (著)



ストーリーまたは物語。
これは広告系の領域における、今年のバズワードの一つだったと思います。
が、その実はストーリーでなく「シナリオ」や「シナリオテクニック」を指していたり、と言った視界も多かったのも事実でしょう。

「物語」の重要性を説くだけでは「机上の空論」となったり、「後づけ」となる事も、現実上のプロジェクトではありえます。
すなわち「点」の視点提示だけで終わるリスクがある、という事です。

「ものがたり」と「ものづくり」との相互作用とは、具体的にどのようにして行う事が出来るか?
本質的な問いとは、このようなものを指すのだと思います。

または、以前エントリーしたような
「ものがたり」を語った後で、具体的にどのようなアクションをしてもらうのか、その仕組みまでビルドインされているのか?
といったような問いです。

takram design engineering による本書は、この前者の問いに対し、
製品開発やデザイン・エンジニアリングに関わるプロジェクトのプロセスにおいて、
「ものがたり」と「ものづくり」とに、具体的な体系を与えている点が圧倒的に優れていると思います。

「ものがたり」に関わる議論は、本書を読むだけで充分とすら思う程、具体性と現実性を持った書籍です。



4. 「考えの整頓」佐藤雅彦 (著)



佐藤氏の思考の旅にお邪魔させてもらえる、ファンとしてうれしい書籍。
氏の「ある事象に横たわる、メカニズムという本質」への向かい方が堪能できるエッセイです。

佐藤氏の作品に必ずある、この「本質的なメカニズム」という着目の出発点。
その一貫した徹底さと「表現にあるほっこりさ」が、エッセイにおいても共通に楽しく味わう事ができます。

たとえば「幸せないたずら」と題されたエッセイ。

デスクの女性に伝える、作業の連絡を吹き込んだいつもの録音済みのICレコーダー。
これを、あるときこっそり作業連絡でない「あるメッセージ」を吹き込み、佐藤氏は冷蔵庫に隠します。

翌日、出勤した女性はさんざ探し、冷蔵庫の中にやっとみつけ、再生ボタンを押したとき、
佐藤氏の声が吹き込まれたICレコーダーは、作業内容でなく
「あ〜、さぶかった」
というメッセージが再生されるのです。
佐藤氏はそのときの女性の驚いた光景を想像し、ほくそえむ。

幸せな未来へなげかける、メカニズムの着目と素敵ないたずら目線に溢れた本です。



3. 「切りとれ、あの祈る手を -〈本〉と〈革命〉をめぐる五つの夜話」佐々木 中 (著)



様もなく情報に肥え太りはしゃぎ騒ぐ批評家か、みすぼらしく自陣へ立てこもりやせ細る専門家か。
あるいは、その場その場にあわせて、この二つの仮面を手早く取り替えながら歩むか。

知に携わる限り、われわれには、このような貧しく卑小な選択肢しか残されていないように見えます。
この現在という時代にあっては。


固く握られた拳で、スローモーションで殴られたかような鈍痛がありました。この本には。
佐々木氏が頭一つ抜け出ていると自分が感じるのは、現代における「歴史へのリスペクト」の希薄さへの指摘だと思っています。

音楽にせよ、服飾にせよ、芸術にせよ、必ず過去へのリスペクトがあった上で、現代の作品へと繋がっています。
が、これは特に広告系特にネット系の領域にも言える事と思いますが、
現代の「情報のアップデート」に価値が置かれ過ぎ、「情報が命令」となってしまっていないか?
そこに過去へのリスペクトは、愛は、目線はあるのか?
そのような立脚点で、豊穣な未来は本当にあるのか?

その現状への問いが語られている点です。
文学への熱量や、革命という展開だけで本書を捉えるべきではない、と思っています。
今年最も衝撃を受けた本と言ってもよい書籍です。


2. 「眼の冒険 〜デザインの道具箱〜」松田 行正 (著)



この観察眼!そして軽やかな思考と知の羽ばたき!
点・線・面・立体、、、。
エレメントというミクロから、デザインへと繋がっていく旅へ、こんなにワクワクと連れ出してくれるデザイン書は他に知りません。
もっと早く読むべきだったと心から後悔した本です。

思考を視覚化する事をデザインと仮に規定するならば、本書ほどそのアイデアが凝縮された本はないのでは、と思います。
ぱあっと視界が広がっていく感覚が味わえると思います。

もしまだ読まれていない人がいるのならば、是非!とおすすめしたい本です。



1. 「驚くべき学びの世界 〜レッジョ・エミリアの幼児教育〜」佐藤 学 (監修), ワタリウム美術館 (編集)



本書、そしてワタリウム美術館で行われた「驚くべき学びの世界展」は、今年最も目が覚める平手打ちと、強く心を打たれ、文字通り感動する内容でした。

子どもたちの、普段の生活の中で沸き上がる「100の言葉」。
それをアートによって具現化し、復権する、という学びへの実践の旅。

本書は、世界最高水準の教育実践として注目を集めている、北イタリアの「レッジョ・アプローチ」が数多く紹介された本です。

音への解釈、影への解釈、素材への解釈、運動への解釈、、、。
様々なワークショップを通じて、子どもたちから発せられるふとした言葉。
ワークショップの内容や、そのプロセスそれ自体も非常に刺激的なのですが、とかく子どもたちの「言葉」。

その言葉にある本質さに、激しく心を揺さぶられました。

場所っていうのは「世界のすべての場所」のこと。(ダリオ 4歳)

絵の中で「音」を見たとき、耳には聴こえなくても心には聴こえるの。(アリーチェ)



詩人のようにキラキラと輝く、子どもたちのこんな世界を変える言葉が、数多く、自然に、ワークショップを通じ、子どもたちから発せされ、それが記録されています。

この子どもたちの目線を最大限にリスペクトした「レッジョ・アプローチ」の目線の素晴らしさ。
サン=テグジュペリの「星の王子さま」を初めて読んだときのような、立ち戻らなければならない視点への気づきが多くある素晴らしい書籍です。


Add your comment