広告でなく課題対象そのものへとフォーカスする (BGH “Quick Cheff Music”)

水曜日, 11月 30th, 2011. Filed under: Advertising feature Interactive



今回は、ちょっとしたロールプレイングから入ってみようかと思います。

ただ、ここで最終的に出されるアプローチは、今後の広告エージェンシーだけでなく、
インタラクティブ・エージェンシーやプロダクションにおいても共通する、
向かうべき一つの方向性が示された回答だと思います。


まず、あなたが「広告エージェンシーの立場の人」だったと想像するところから始めてみましょう。
そこで、あなたはクライアントから、こんなオリエンを受けます。

担当者A「私たちの新たな電子レンジ製品を訴求する、キャンペーンを考えて欲しいのです。」
担当者B「色々とこだわりはあります。ただ、この市場で人を魅了し、新たに訴求できるような機能やデザインなどは、実は、ほとんどないのです。」
担当者A「でも何か人を惹きつけるような、広告アイデアを持ってきて欲しい。ここからがプロであるあなたたちの腕の見せ所です!」

さて、ではあなただったら、どのようなアクションを取るでしょうか?

ひとまず、思いつく限りの新登場を訴求するユニークな切り口を出しまくる。
かつ人にインパクトを与えるような、さまざまな広告アプローチを、多種のヒントから探しまくる。
そして、限られた時間のなかで最良と思われる広告プランを提案していく。
そういったプロセスを経る他ない、かのように思われます。


が、アルゼンチンの広告エージェンシー「Del Campo Saatchi & Saatchi」は、
家電メーカーである「BDH」に対して、求められていた広告プランではなく、
「商品そのものに対し新たな機能を加えるアイデア」を提案し、
「Quick Cheff Music」という商品そのものへの開発へと、そのフィールドを移したのです。


そのプレゼンテーション映像がこちらです。




「全ての電子レンジのタイマー音は、画一的な状況である」という、
一見当たり前すぎて、気がつきにくい市場の類似点とチャンス領域へ着目。

そこで「タイマー音に、自分の好きな音楽をUSBから転送でき、設定できる機能」を
新たに追加した電子レンジを開発、限定生産することで、圧倒的な市場差別化を図る

といったアプローチです。


顕在化されていない世の中のニーズを見出し、それをアイデアの力で
よりそれに触れた時、気持ちが楽しくまたは美しくあれるようなモノ・コトを提供していく事という、
本来、広告エージェンシーが持っているニュートラルな立場。
そして、「インサイトの発見力」、「アイデアの発見力」、そして「プランの実現力」という
広告エージェンシーが持っている、最も強いコアコンピタンス。

そこに立ち返る事で、広告エージェンシーが得られる回答への視界の広がり。
さらには、社会へ存在意義を示す可能性。
それらをとても示唆する、向き合い方と回答だと思います。


インタラクティブ領域からは、例えば
「より人の役に立ち、しかも楽しい、そして結果的に広告の機能を担っている」という、
ツールやサービスを提供するプラットフォームづくりというアプローチが、その回答として
なされるケースが増えています(例えば「Heineken Star Player」や「Nike+」のようなサービス)。


ブランドとは、本来その企業の商品とサービス、そして人によってでしか、他者に示す事が出来ない。
その本質的な事柄とその支援への必要性が、早くはIDEOのような組織の在り方や、
課題解決への独自プロセスを生む事となった一つの背景でもあるかと思います。

改めて、この事例から広告エージェンシーだけでなく、課題解決の依頼を受託するすべての業態において、
問われ続けている事を痛感します。
商品やサービス、人といった本質的な課題に向き合う事を、です。

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