リアリティ・イズ・ベター (ジェイン・マクゴニガル「幸せな未来は『ゲーム』が創る」)
火曜日, 10月 25th, 2011. Filed under: feature

ゲームデザイナー、ジェイン・マクゴニガル氏による著書「幸せな未来は『ゲーム』が創る」。
これが、とても気づきの多い面白い内容であったので、少々紹介を。
その趣旨は非常に分かりやすく、一貫しており、一言で書いてしまうならば
「現実の世界を、もっとゲームのようにすることで、世界の現実的な問題をより楽しく、より解決することが出来る」
というものです。
TEDでも同様の講演内容がありますので、合わせて紹介してみます。
この考え方を示す分かりやすい具体例を、まずは3つほど整理含め、挙げてみます。
1. Chore Wars ー毎日の家事をより楽しくするには?ー
Chore Wars
家事は、時に嫌々な、そして面倒な「やらなくてはならない」ものとみなされています。
「家事をすることがより楽しく、そして持続的なものにできるにはどうすれば良いのだろうか?」
その問題設定が、このゲームの出発点です。
具体的には、自分のアバターを作成し、自分の「家事リスト」を作ります。
が、これはアドベンチャーゲームであるため、例えば「洗濯する」であれば「魔法を使って綺麗な衣服を出す」のように設定します。
そして、それぞれの仕事には、経験値、仮想通貨などのポイントがあり、家事を行うことで獲得でき、それを「肩たたき券的に」リアルな報酬に置き換えられるゲームとして楽しめる、というものです。
「オンラインだけで楽しむのではなく、家族やルームメイトなどと、リアルに競争して楽しむ」という点が、「家事は面倒」という具体的な問題の解決へリアリティを与えているARGです。
2. Day In The Cloud ーフライトのストレスを緩和し少しでも楽しくするには?ー
Day In The Cloud
自分もそうなのですが、長時間のフライトは不安やストレスを与え、時に苦痛なときがあります。
「空の旅を怖がるのではなく、楽しい時間であれるにはどうすれば良いのだろうか?」
これが、このゲームが立脚するリアルな問題設定です。
ヴァージン・アメリカとグーグルアップスとで開発されたそのゲーム内容とは、
「同じ時間に、同じ二つの空港間を反対方向に向かって飛んでいる旅客機2機の乗客同士で、パズルを解く事で競い合う」
というものです。
機体が高度1万フィートを超えると、無線LANが起動し、乗客は、同じ飛行機に乗った仲間(プレインメイト)とログイン。
そこで出される難問は、プレイヤーの数が多ければ多いほど、解きやすくなる為、周りを誘い、一緒に協力し合いながら「こっちが勝ったぞ!」と一緒に盛り上がれ、楽しめるゲームを提供する、という内容になっています。
これも、飛行機が苦手な人(ストレスの孤独から逃れ、何かに没頭する事でその恐怖を忘れたい)のインサイトを、巧く救う具体的な解決策になっているゲームだと思います。
3. Nike+ ーもっとランナーが挫折せず、しかも楽しく続けられるには?ー
Nike+
寒くても、眠くても、疲れていても、雨の日でも外に出て走る事。
自分も過去挫折した事があるのですが、この持続のための動機付けは大きな課題と思います。
Nike+では、その課題に対し、
・スニーカーに装着した小型センサーによってiPodへ速度、距離を転送することで、音楽を聞きながら、即時に把握できるフィードバック性。
・そしてiPodをPCへ接続し、シンクする事でランニング履歴が更新されることによる、ポイント加算、レベルアップ。
・さらに、その数値を共有することで、仲間に知らせることも、または競争することもできる、という共有性。
・合わせ、合計Km目標を設定し、誰でも参加できるチーム(仲間)によるモチベーション維持。
・時に励みにも感情的なつながりにもなる、アバターの存在。
と、着実にランナーのインサイトに根付いたサービスを提供しています。
Nike+こそ、最も分かりやすく、かつ浸透されている
「現実の世界を、もっとゲームのようにすることで、世界の現実的な問題をより楽しく、より解決することが出来る」
という例かと思います。
と、いくつか例を挙げてみましたが、この書籍で最も共感するのは、
「現実から逃避するためのゲーム」ではなく、
「現実の生活を改善する、または生活をより良くする」という極めて現実的な問題解決のために、
ゲーム的な発想を取り入れる、という問題解決ベースの立脚点です。
「ゲーミフィケーション」というバズワードは確かにありますが、
企業の広告的、あるいはマーケティング的な応用手法として、スコアリングやレベルアップを適用していく事がそれ、というような、表面的(もしくはノウハウ的)な解釈でとらえてしまうと、ここで伝えられている事は、途端に視界は狭くなる(さらにさもしさが増す)と考えています。
その中で「ある現実上の問題を、よりポジティブに、かつ持続的に解決するためのアプローチの一つ」として考える本書の立脚点には、とても未来を感じました。
多少厚みのある本ですが、事例も豊富でリアリティあり、良書と思います。
「幸せな未来は『ゲーム』が創る」ジェイン・マクゴニガル (著)

