“HIGH5 3™” 伊藤直樹氏の講演サマリー

Posted by kUtsunomiya | Posted in Inspiration | Posted on 26-01-2010

先日の、“HIGH5 3™” での伊藤直樹さんの講演。
参加された多くの方が感じられたのではないかと思いますが、素晴らしい内容でした。
広告の講演でここまで感動したのは、自分も初めてなくらいな内容でしたので、
頭を整理するために、少々まとめてみることにしました。

自分の解釈が多分に含まれている点と、少々長い点、いくつか割愛している点に
難があるかもしれませんが、行かれなかった方にも、なんらか役に立てればうれしく思います。


・人に受け入れられるために必要なのは、「良心」と「カタルシス」

Coca-Cola “Happiness Factory”


ゴミ山のような、溢れた情報/広告の中で、人に/コミュニティに、
受け入れられるためには、何が必要となるのか?という問いに対する
答えが「良心」と「カタルシス」。

「良心」とは、「ああ、そうなんだよねー」と受け入れてもらうための、
「相手への配慮」のことを、ここでは指しています。

「インサイト」と呼ばれるこのワードも、「良心」という呼ぶ方になると、
一送り手として謙虚な姿勢を要求する、良い言葉だと思います。

2つ目の「カタルシス」とは、その作品に相手が触れる事で、
何かが「解放される、浄化される」ことです。

例えば、先ほどの “Happiness Factory”。
相手へコカコーラを届けるために、自動販売機の裏ではこれだけの想いで人が動いている、
それを擬人化して伝えることで、「幸せを届けるさま」が伝わってくる、
それがカタルシスを生む、ということを指しています。


・さらに「毒を盛る」

Honda “Choir”

Honda Civic Choir TV ad (UK) from indoloony on Vimeo.


「広告が人に受け入れられること」とは、
「学校へ転校してきた転校生が、どうクラスメイトに受け入れられて行くか?」
という文脈と似ています。


相手がまだ身構えている状態のときに、「何かしらのこっけいさ」を
こちらからあえて提供していくことで「ああ〜、こいつってこんなやつなのね」と
相手のガードが下がり、コミュニティへと受け入れられて行く。

「相手を “にやっと” させる」こと。
そのさまが、受け入れられる為に必要な要素、としたうえで、
そのことを「毒を盛る」と言い表わされています。

例えば、先ほどのHonda “Choir”で言えば、
車のサウンドを、コーラスで表現していること。
しかも、それを集団で、真剣に、しかも地下でなぜかやっていること。
そういった、ある種のこっけいさで「にやっと」させることを指しています。


・コミュニケーションは、場をわきまえないとならない

Chalkbot


広告は、街を汚して行く存在であってはならない。
広告は、「環境」や「空間」に根ざした表現でなければならない。

と、いう考え方が「場をわきまえる」という意味です。

その例として挙げられたのが、この「Chalkbot」。

ナイキがスポンサーとなっている、癌患者支援のための ”LIVE STRONGプロジェクト” における、
ツール・ド・フランスでの、コミュニケーション事例です。

自転車のロードレースには色んな応援方法がありますが、
その一つに「道にチョークで字を書く」という方法があります。
これを、癌と闘っている人や癌で亡くなった方へのメッセージに限定して、
メッセージを募集し、道にチョークで描いて行くのが、ここでのアイデアです。

・「より社会につながろうとすること」
・「チョークという、だれしもが持っている、道路に落書きをした記憶への訴えかけ」
・「そして雨に打たれたらチョークは消える、という環境性」


これこそ「場をわきまえた広告コミュニケーション」の一つなのではないだろうか。
広告が必要とされるには、こういったアプローチが必要とされるのではないだろうか。
そういった事が感じられる、インタラクティブの世界における新たな事例だと思います。


・「プラットフォーム」と「クラフト」を組み合わせることで、何ができるか?

Wieden+Kennedy は、先ほどのCoca-Cola “Happiness Factory”のように、
モノを創りだすことへのこだわり=「クラフト」のレベルが非常に高いです。

一方で、日本は、世界中で最もネット環境のプラットフォームが整備された国とも言えます。

それでは、このレベルの高い「クラフト」に、インタラクティブな「プラットフォーム」が
乗ったら、一体どのようなものが生み出されるのだろうか?

それを試す事への価値を感じたために、伊藤さんはW+Kへ移籍される事を決めたと
言われています。

「プラットフォーム」と「クラフト」の組み合わせの、一つの例。
それが、「Nike Tasuki Twitter」です。

Nike Tasuki Twitter
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ナイキジャパンが、箱根駅伝に参加する各大学ごとへの応援メッセージをツイッターで募集。
そのメッセージデータは、ミシンをハックすることにより、タスキに縫われていき、
その模様をUstreamでライブ中継する。
そして、完成したタスキは大学の駅伝チームに贈呈する/原宿の店舗に展示する、というのが
一連の施策内容です。

「Twitter」+「ミシンハック」+「Ustream」
“今な” プラットフォームとテクノロジーをフルに活用した、
でも真ん中に「タスキ」や「応援」という、「良心」と「カタルシス」がある、という点に
アイデアの強さと素晴らしさを感じる事例だと思います。


・もしかしたら、数年後には「ビル」を作っているかもしれない

最後の話では、スライドにビルの画像が映し出されていました。

例えば「ビル」だって、コミュニケーションに関わること。
そしてそこには、そのコミュニケーションを創りだす、建築家やインテリアデザイナーたちがいる。
それでは、自分たちの持つコミュニケーションの知見を活かせば、
そういった方たちと、さらに伝わることが生み出せるのではないか?

「コミュニケーション」に関わるすべてをデザインしていきたい。
そして多くの人たちと、「クロスカルチャー」の考えで、ものを生み出していきたい。
そんな意味で、もしかしたら自分達は、数年後には「ビル」を作っているかもしれない。




この話で講演が終わりましたが、自分にとって、この最後の話が最も印象的でした。
一言で言えば、見ている「視座の高さ」の違い。

分かりやすく、真摯に、広告コミュニケーションについて話されたこの講演は、
文字通り、その場の空気が変わった内容だったと思います。

最後に、この講演自体が、既に「良心」と「カタルシス」、そして「毒を盛る」
ことで構成されていることにも、ふと気がつきました。
コミュニケーションのプロだからこそ、話す内容にも気が配られている。
自戒と気づきの多い、有意義な講演でした。


最後に、こういった貴重な講演の機会を提供頂いた、High 5のスタッフの方々、
ありがとう御座いました。
挨拶などは全く出来ませんでしたが、今後も有意義なイベントを開催頂ける事を願っています。
また、今度は自分も少しでも役に立てるような立場に、逆に回っていきたい、とも
同時に思いました。


そして最後に、ここまで長いサマリーをわざわざ読んで頂いた方々、
読みにくい点あったかと思いますが、どうもありがとうございました。


Comments (9)

ウツさん、素晴らしいです。High5行けなかったのでこういうのは本当にありがたいです。

twitter経由で拝読させてもらいました。
「インサイト」=「良心」=「相手への配慮」。
本当にそうです。いいキーワードをありがとうございました。

初めまして。僕も参加出来なかったので、大変助かりました。
有難うございます!!

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わざわざ感想までありがとう!
そう言ってもらえるとすごくうれしいです。

ありがとうございます。
「良心」ってすごくいい表現ですよね。
相手を慮る、日本的なところとも合致しますし、
色々解釈の仕方もありますしね、

はじめまして。
こちらこそ、長いサマリーを読んで頂いて、
メッセージまでいただいてありがとうございました。

とても美しく、素晴らしいエントリーをありがとうございました。感動いたしました。「転校生のような~」という視点は、目からウロコでした。
本当にありがとう。

いえいえ恐縮です。ありがとうございます。
伊藤さんは素晴らしいですが、自分はまだまだな人間ですので、
今後ともよろしくお願いいたします

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