残りの90%のためのデザイン (世界を変えるデザイン—ものづくりには夢がある)

Posted by kUtsunomiya | Posted in Book, Inspiration | Posted on 21-01-2010

「世界を変えるデザイン——ものづくりには夢がある」シンシア スミス (著)

世界の全人口65億人のうち、90%にあたる58億人は、
私たちの多くにとって当たり前の製品やサービスに、まったくと言っていい程縁がない。
さらにその約半分は、食糧や、きれいな水、雨風をしのぐ場所さえ満足に得られない。


本書は、このマーケットとして対象外とされてきた、90%の貧困層の人々に対して
具体的なプロダクト例を紹介しながら、「デザインによってどんな貢献ができるのか?」
を解説していく本です。

まず、最初に自分がショッキングだったのが、
この中で登場する「Q Drum」と「ライフストロー」というプロダクト。

「デザインが持つ解決力」ってこういう事を言うんだな、と深く納得される、
あまりに素晴らしいプロダクトなので、ここでも紹介をしたいと思います。

Q Drum


世界中、特にアフリカの地方部では、何百万もの人々が、安定したきれいな水源から何キロも離れたところに住み、コレラ、赤痢など、水の媒介する病気にかかりやすい。
十分な量の水は重くて運びにくい。
Qドラムは耐久性のある容器で、簡単に転がすことができ、75リットルのきれいな飲み水を運べるようデザインされている。
持ち上げて運ぶのではなく、筒型の容器に入れて水を転がすことで、水を必要とする人たちにとって水運びの苦労を軽減する。


Lifestraw


世界の貧困層の約半分が、水に媒介する病気に苦しむ。
毎日6,000人が、安全でない飲み水を飲んだために命を落とし、その多くは子供たちである。
ライフストローは、個人携帯用浄水器で、どんな水でも飲み水に変えることを目指してデザインされた。
チフス、コレラ、赤痢や下痢など、水によって媒介される病気の予防に効果があり、15ミクロンといった小さな粒子を取り除くことが証明されている。



もう一点、これらプロダクトと本書から注目すべきなのは、

残りの90%の人々を「慈善」の対象でなく、「顧客」と考えていること。

という視点だと思います。

今の、人々の状況や行動を、まず知る。
そして、現状抱えている問題をデザインという手段で提示し、
なおかつ、人々が購入できる価格に設定して、現実的に提案していく。

このデザインにおける問題解決のプロセスは、
視点を「地球」や「人類」などに置き換えてみるだけで、
より多くの人への貢献ができ、ビジネスにも十分になりうるということ。

本書を読んで何がショッキングだったかというと、
「残りの90%の人々を顧客と考える」という、
そんな当たり前な視点に気づけなかった自分がいる、という点です。



今、自分が住んでいる身近な世界は見なくてよい、という事では全くないと思いますが、
自分の視野の狭さを知る、という意味で、とても有意義な本でした。

大変オススメの本です。

Comments (2)

”「デザインが持つ解決力」ってこういう事を言うんだな、と深く納得される”デザインが好きな理由が漠然としていたけど、今までで1番衝撃がありました。この話に出会えて嬉しいかった:)

コメント、ありがとうございます。
自分の見方さえ変えれば、出来ることは限りなくある。
言われて見れば、ごく当たり前な事が、デザインというフィルターを通じただけで
リアルに腹に落ちてきますよね。

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