
読んでから、はや1ヶ月経っていましたが、GT伊藤直樹さんによる新刊。
はっとする「気づき」が与えられ、
その奥深さを、刺激と共に「知り」、
自分の思考と行動の浅さに「反省」し、
「ポジティブに」でも「より謙虚」に追求していこうと、改められる。
これは多くの本が持つ役割の一つかと思いますが、その意味で、この領域における本で、
ここまで逃げずに本質的な言葉で語られた本は、そうそう無いのではないかと思います。
例えば、インタラクティブなコミュニケーション体験を創ることについてのたとえとして。
インタラクティブを使ったコミュニケーションは、「お化け屋敷」に似ていると思うんです。つまり、お客さんに対してこちらから働きかけ、そこで起こった行動に対してさらに働きかけ・・・と
相互関係をつくり出していくことで、カタルシスのある「体験」を提供している。
そういうものがインタラクティブを用いたコミュニケーションの基本だとぼくは考えています。
これからの広告は、この「遊園地のアトラクションづくり」に似たものになっていくと思うんですよ。
カタルシスのあるさまざまな「体験」を受け手に提供することで、企業やブランドとの「つながり」を深めてもらったり、メッセージを感じてもらったりして・・・。
そうでなければ伝わらなくなったということもありますが、そのほうがずっとよく伝わるんです。
頭でわかるだけでなく、身体で感じてもらうわけですから。
いわば、どういう「お化け屋敷」にすれば、きちんと伝えたいことが伝えられるのかという目線で、広告の企画を考える時代になりつつある、ということです。
そして、そのベースにあるのが、「体験」のプロデュースというコミュニケーションであり、
インタラクティブというコミュニケーションの形態なんです。
とかくシンプルで分かりやすい。伊藤さんの企画に通じる分かりやすさが持つ、伝達力の強さが感じられます。
インタラクティブなコミュニケーションで最も必要なのは、「謙虚さ」だと自分は思っています。
講義でも、本でも、仕事でも、そして広告を接する人に対しても。
だから結果的に、そのコミュニケーションがインタラクティブなものとして成立できる、
そう捉えることもできると思います。
メディアがどうの、とか、WEBがどうの、という話では一切なく、それはまず姿勢の話だと思うのです。
広告の領域において「これ、すげえだろ」や「これ、流行っているから」の意図から
一方的に行っているものであれば、それがWEBのどんな新しいテクノロジーを使ったものであっても、
全くインタラクティブなコミュニケーションとはなりえないと思います。
そこにインサイトから帰結した「理由」がない限りは。
大事なのは、受け手がその広告に接したときの反応を想像することでしょうね。
グラフィックであれ、テレビCMであれ、どんな広告をつくるときにも
あてはまることだと思いますが、インタラクティブを用いる場合には、
そこが命といっていいくらい重要です。
広告に接した人がどう思うかを徹底的に検証するんです。
そのイメージが的確にできないと、うまく伝わるか、どのくらい話題になるかと
いった肝心なところが読めません。
つまり、人の行動をデザインするというか、ある種の「空間導線」を企画のなかに
埋め込むことができるようになるんです。
伊藤さんのインタラクティブに対する核の考え方(あるいは良心)が、見えてくる言葉だと思います。
あとは「伝わる」ために、どこまで逃げずにこだわれるか。
そこがこの本から得られる、もう一つの大きな気づきだと思います。
ぼくは打ち合わせのときに、全員がおもしろがるものが出るまでは、
企画を決めないことにしているのですが、
そこで全員が盛り上がるような企画は、間違いなくいいアイディアで、
いい広告になるんです。
企画のよしあしは、やはりビッグアイディアで決まるということでしょうかね。
ぼくの仕事でいうと、ハンゲームのキャンペーンだったら「人生の半分は、ゲームだ。」が
ビッグアイディアです。
「BIG SHADOW」なら、「影遊び」でしょうか。
いわば、企画の中心、真ん中の部分。
まずは、そこを見つけることです。
そのうえで、ビッグアイディアを囲むようなイメージで、
メディア展開の仕方や、コピー、デザインといった表現などのキャンペーンを構成する
すべてを考えていくんです。
目標は、3行で企画書のサマリーのようにして書けるところまでシンプルにすることですね。
「LOVE DISTANCE」なら、
「遠距離恋愛中の男女ふたりを、出会うまで実際に走らせる」。
シンプルだからそこからいろんな展開もできるし、シンプルだからブレないんです。
それに、シンプルだと、わかりやすい。
もうひとつ、ビッグアイディアがシンプルになっていると、人の口の端に乗りやすくなるんです。
評判をつくろうと思ったら、口の端に乗りやすくしてやらなくちゃいけないんです。
伊藤さんの企画は、すべてビジュアルがすぐに浮かび上がり、とかくシンプルなものが
ほぼ全てと言ってよいかと思います。
「企画の中心、真ん中の部分。」そこに至るまで、逃げずに思考を深めて行く。
この言葉を読むだけで、自分にとっては反省することしきりだったりします。
そしてインタラクティブの領域における、以下のような見方。
こういった言葉を今発せられる人は、少ないと思いますし、だからこそこの本の意義はあるのだと思いました。
やっぱりメッセージは表現で伝えるものなんですよ。
もしかしたら、表現でなきゃ伝わらないといってもいいかもしれないくらいです。
このことは、ぜひ肝に銘じておいて欲しい。
人の心を動かすのはやっぱりテクノロジーや仕組みではなくて表現なんです。
ほかのメディアを見ても、それは明らかでしょう。
ウェブはまだ新しいメディアですから、いまはテクノロジーや仕組み、インターフェースといった
部分がフューチャーされていますが、この先ずっと同じスタンスであるはずはない。
メディアとしてある程度の成熟を遂げたら、あとは表現とコンテンツのことしか
語られないんじゃないかとぼくは思っています。
ほぼ引用ばかりではありましたが、
自分の出来ていなさを痛感するのと同時に、体験を企てることへのヒントが詰まった良書でした。
改めて、積極的に人に薦めたいと思います。